古典の入試問題仕立てにした「魔法使いの弟子」の解説

長岡シティアンサンブル第12回オータムコンサートより


交響詩「魔法使いの弟子」Paul Dukas

演奏を参考にして次の文章を読み、赤色斜体部A〜Fの状況あるいは心理を表すのに最も適切な音楽をあとの1〜6から選べ。 なお、「箒」とは掃除で使う「ほうき」のことである。

 今は昔、魔法使ひの師弟ありけり。師は呪文の巧者にて、箒を変じて僕となし、よろづに用ゐけるを、この弟子、うらやましくて盗み聞きけり。

 ある日、師の留守に、水を汲み置くを命ぜられけるが、「あなうるさし」と思へども、師の命なれば、否びがたく、密かに「呪文を試みて箒に水汲みせさせん」と思ひて、聞き学びたる呪文をかけたるに、かしこくも箒は僕に変じたり。 「行きて水を汲め」と言へば、素直に従ひて、井戸に行きて 水を汲む。 弟子、「頼もしき僕かな」と喜びて見るうちに、え知らず眠りにけり。 箒、休まず働きたれば、水あふれて床に満つ。 弟子おどろきて回りを見るに、「いかで止めさせん」と思へども、止むる呪文、元に戻す呪文、いづれも知らざりければ、せんかたなく、 手にしたる斧にて、井戸なる箒を割り裂きてけり

 弟子、「いと不憫にこそあれ」と思ひつつ部屋に戻れば、井戸の方よりかすかに音のしけるをのぞきて見るに、あにはからんや、割り裂かれたる箒のかけら、ことごとく元の姿となり、みな桶を持ちて、水を汲みゐたり。 あまたの箒の働けば、水はたちまちにしてあふれ、家中に流れ、渦をなす。 弟子せんかたなくて、絶望のあまり叫べども、何の験やあらん、渦の中に没したり。

 その時師帰りて、呪文を一喝したれば、水は失せ、箒は元の姿に戻りたり。 弟子、Fはづかしくて、師をうかがひ見るに、怒りのいみじきを悟り、逃げんとすれど、捕まりて仕置かれてけり。

 道を極むるは難く、生学びは災ひをもたらすものなりとなむ、人々噂しけるとぞ。

楽譜

2001年11月29日「だから何やねん」組入/2003年4月12日リンク修正

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Copyright © 2001 by Tomohiro CHIKARAISHI, Hiromi YAMAMOTO, Motoo YAMAMOTO and Takashi TODA