職務上の必要があって汎用jpドメインの管理を移管する手続きに関わったのだが、「登録者名(Registrant)」情報の修正登録に際して、ドメイン管理業者(レジストラ/JPRSの指定事業者)ごとの考え方の差異に起因するトラブルに直面して苦労した。
問題のドメインは研究プロジェクトで必要があって確保したものであり、以下の経過をたどっている。
「登録者名」情報の変更は「ドメインの譲渡」と一体不可分のものであり、「譲渡」を伴わない「情報変更」は有り得ない。 誤記訂正や商号変更などで「見かけの上では譲渡に見える」状況も有り得るが、いずれにしても「譲渡に相当する事象」が存在することに違いは無い。 そこで、「譲渡または相当する事象」が確かに存在することを保証するため、「登録者名」情報に現に登録されている者の確かな意思表示と併せ、確かにその登録者であることを証明する印鑑証明などの証明書類を、属性型ドメインに関する手続きに準じる形で要求する。
「登録者名」情報は現在のドメイン所有者が好都合なように自由に変更可能なものであり、「ドメインの譲渡」とは全く別の作業である。 「登録者名」情報として自社名を登録してあるのは単なる「初期値」に過ぎず、変更する手段も利用者に案内している。 新しいドメイン管理業者に移管したあと「登録者名」情報に不都合が生じたのであれば、新しい業者の判断で変更すれば良い。 そのために、印鑑証明の提出などという不要な手続きを求める事例は聞いたことが無く、このような不用意に法的拘束力を持ちかねない行為を行うことはできない。
結局、二進も三進も行かなくなったので、上記の業界団体からネット関連業務を受託している業者が、4番目のドメイン管理業者との契約を1年後に更新せずに、他の業者に乗り換えた。 新しい業者は「登録者名」情報に現に登録されている者の意思表示を求めるだけで、特に証明書類等は要求しなかったのだが、3番目のドメイン管理業者はその意思表示も拒否した。 この状況を新しい業者に報告して対応を協議した結果、「登録者名」情報に現に登録されている者と電子メールで連絡する方法が無くなった場合の手続きを適用することで、強引に問題を解決した。
3番目のドメイン管理業者が頑なに手続き履行を拒否した理由を、その主張から推測すると、「登録者名」情報に自社名情報が登録されていることにより、自らが「ドメイン所有者」と見做される結果になるという認識が全く無かったように思える。 そのため、要求されている行為は「ドメイン所有者」としての行為ではなく、あくまで「ドメイン管理業者」としての管理行為であるとの立場を崩さず、自らにその権限は無いとして頑なに拒否を貫いたらしい。
“「登録者名」情報の登録変更”と“実態としてのドメイン譲渡”とは、全く独立した別の手続きであるとする3番目のドメイン管理業者の考えは誤りであると思う。 4番目のドメイン管理業者のように極端に厳格な手続きを要求するのもどうかと思うが、その前提となる、「登録者名」情報の登録変更は常に「譲渡または相当する事象」に連動するという考えは順当なものであろう。 ただ、実際に3番目のドメイン管理業者のような考え方も存在しているという事実は認識しておかねばなるまい。
当方の最大の失策は、3番目のドメイン管理業者に移管したあと、「登録者名」情報がその業者名になっていることの悪影響を深く考えなかったことである。 ドメインの「登録者名」情報がどうなっているかは、随時確認するだけでなく、自分が所有していることが適切に表現されていなければ速やかに修正することを心がけるべきである。
また、ドメイン管理業者の移管と同時にドメインの譲渡をも行う場合には、移管前に予め「登録者名」情報を譲渡先に書き替えておくのが無難である。