Microsoft Edgeの劣悪なユーザインタフェース

 Microsoft Windowsが10になるのに併せて標準ブラウザがInternet ExplorerからEdgeに変更された。 Internet Explorerも当面使えるとのことで、その理由はEdgeがhtmlの古い規格を見捨てているからであるとアナウンスされている。

 しかし、実際使ってみると、Edgeはhtmlの規格というような機械寄りの部分とは無関係と考えられる、利用者による動作制御に関わる部分で、随分と出来が悪い……というか、Internet Explorerで培われてきた必要不可欠な機能が削られたり、明らかに使い勝手を悪くする方向に改変されていたりする。 つまり、Edgeのユーザインタフェースは極めて劣悪なのである。

ダウンロードするファイルの置き場所

 Edgeは、ダウンロードしたファイルを、とにかく有無を言わせず「ダウンロードフォルダ」の直下(ルート)に置く。 典型的な「ダウンロード」操作で利用者が能動的に作るファイルでも、普通はダウンロードフォルダの中で内容ごとに分類するであろう。 全てをルートにフラットに置いたら、整理がつかなくなって何が何だか解らなくなる。 ダウンロードしたファイルを、その用途に関連するファイルの傍に置くのも、ごく普通の行動である。 そういうことをEdgeは一切認めない。 已むを得ず、ダウンロードするごとに逐一そのファイルを「ダウンロードフォルダ」から目的フォルダに移動させるという馬鹿げた操作を行うことになる。

 ファイルをダウンロードするのは、ユーザが「ダウンロード」と認識する場合だけではない。 ユーザの意識としてはネット上の情報を単に閲覧しているだけで「ダウンロード」ではなくても、ブラウザの動作としては技術的には「ダウンロード」に該当するというのは、ごく普通のことである。 もう少し具体的に言うと、ダウンロードしたファイルの内容を確認したら、もうそれを手元に残しておく必要が無い場合である。

 Internet Explorerの最近のバージョンでは、ダウンロードしたファイルを「閲覧するか、保存するか」の選択が求められる。 「閲覧」を選択すれば、ダウンロードした結果は一時ファイルの領域に保存され、適宜自動的に消去される。 それに対して、Edgeはダウンロードしたファイルが「閲覧目的か保存目的か」を全く考慮せずに「ダウンロードフォルダ」に自動消去されない形で保存する。 その結果、閲覧目的の一時ファイルであるべきファイルが「ダウンロードフォルダ」に溜まって、収拾がつかなくなる。

 技術的に「ダウンロード」になるのは、htmlレベルでダウンロードになる場合のみではない。 htmlレベルで単なる「リンク」であっても、ブラウザが直接取り扱えないファイル形式であれば、ダウンロードとして取り扱われる。 具体的にはリンク先がhtmlでもpdfでもない場合である。 かつてのInternet Explorerでは、Microsoft Officeのファイルを直接取り扱っていたことがあるが、それは最近のバージョンでは無くなった。

 Internet Explorerでは、このような場合ダウンロードしたファイルは一時ファイルの領域に保存される。 ユーザが明示的に「対象をファイルに保存する」を選択した場合にのみ、「ダウンロードフォルダ」やその他の一般のフォルダに保存される。 当然の仕様であろう。 しかし、Edgeは単なる「リンク」であっても「ダウンロードフォルダ」に自動消去されない形で保存してしまう。

 要するに、Edgeを使っていると「ダウンロードフォルダ」にユーザが存在を認識していないファイルが大量に蓄積されてしまうのである。

印刷内容の詳細な調整

 htmlというのは、本来は画面サイズや印刷サイズに合わせて文章をレイアウトするものであり、サイズを限定したり特定したりするのは本来の趣旨からいうと邪道である。 しかし、Web発信情報を発信者が望む形にレイアウトしたいという欲求は強く、本来は作表のための例外的機能だった「幅指定」を、当たり前のように全ての情報に施すようになってしまった。 その是非はともかくとして、このような状況に対応するため、Internet Explorerはある時期から印刷プレビューを見ながら倍率を調整して印刷できるようになった。

 Edgeにも、流石にこの機能はある。 しかし、実用的ではない。 その理由は「倍率指定の刻みが極端に粗い」からである。 各々のWebに合わせた適切な印刷を行おうとするならば、少なくとも1%刻みの調整ができることは必須である。 しかし、Edgeは倍率を数値指定することができず、内容から自動判定した調整不能な倍率か、さもなくばメニューで与えられた25〜50%刻みの粗い設定から選択するしか無いのである。

 Edgeの印刷には、フレームを選択できないという問題もある。 複数のフレームで構成された全体をまとめて印刷するのみで、構成する個々のフレームの内容を印刷することはできない。 しかも、詳しくは確認していないが、フレーム内に展開されたページの2ページ目以降が印刷されないことがあるようだ。 確かに、フレームという機能自体使われなくなってきている(インラインフレームへの移行が進んでいる)ものであり、真剣に対応する必要は無いという見解もあるかもしれない。 しかし、現にEdgeはフレームに対応して画面表示を展開しているのであるから、印刷もそれに見合った機能を有するべきであろう。

 (余談になるが、インラインフレームの内容のみを簡単に印刷する方法というのは提供されないものだろうか? これが無いために不便を感じることは極めて多いのだが……)

プリンタの制御

 Edgeの印刷制御ダイアログは、プリンタドライバの制御画面へ移行することができない。 印刷制御ダイアログの中で全てを制御してしまえるようにするという発想らしい。 機種依存部分(この場合「機種」とはプリンタの種類のこと)も機種独立部分も1つの操作体系の中だけで制御を完結させようするのは、Edgeに限らず、あらゆるシステムの開発者が抱く野望である。 そして、その野望は、ことごとく挫折している。 原理的に「依存部分(この場合プリンタ)の個性」を圧殺しない限り絶対に実現不能だからである。

 Edgeが印刷制御ダイアログの中だけで制御を完結させようとするのは、プリンタの個性を圧殺しようとすることである。 つまり、Edgeを使っている限り、個々のプリンタの個性は発揮できず、プリンタの能力を充分に活かすことはできないのである。

印刷制御ダイアログのスクロール

 Edgeの印刷制御ダイアログは、小さくしてスクロールして使うことができないのにも関わらず、「印刷」という必須ボタンが下の方にある。 従って、ダイアログが画面の下の方に出てしまった場合、あるいは下の方へ動かした場合、使えなくなる。 ダイアログを上に動かせば使えるわけだが、そういう場合は理由があってダイアログを下に移動しているわけであって、それを元に戻すよう強要するのはユーザインタフェースとして拙い。 また、ダイアログ自体を動かすにはWindowsの場合ダイアログの上方をドラッグする必要があり、画面全体の大きさによっては、ダイアログの下の方を出すには画面上方の域外にまでのドラッグが必要になって、不可能になってしまう可能性もある。

 画面が一定の大きさ以上でないと使えないダイアログというのは、そのこと自体が根本的な欠陥設計なのである。

スクロールバーを覆い隠すメニュー

 Edgeの内蔵PDFビューアは、メニューが文書表示部分の上方に覆いかぶさって表示される仕様になっている。 これが、何とスクロールバーにも覆いかぶさるのである。 覆いかぶさった部分ではメニューが優先的に反応する。 つまり、スクロールバーの上端を触ることができず、スクロールバーを操作して文書の先頭を表示することができないのである。 こんな「根本的に使えなくなる」欠陥が残ったままソフトウェアが公開されたということ自体、驚くべきことである。


2016年5月26日初稿

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