PC-9801でテクトロエミュレーションを
行うためのドライバ

 今でこそ、画像情報を通信回線で送るのは常識ですが、 こんなことができるようになったのは、 つい最近、即ち1990年代半ば以降ののことです。 逆に言えば、画像情報を気軽にやりとりできるほどにまで 通信環境が向上したことが、1995年ごろのインターネットブームをもたらした と言っても過言ではありません。

 インターネットブーム以前の、通信速度が遅かった時代でも、 何とかして画像情報を送ろうという努力がなされていました。 インターネットではJPEGやGIFなどの形で 画像のラスター情報、即ち、 画像を画素(pixel)が規則的に並んだものと看做して、 どんな画素がどのように並んでいるかということを情報化したものを 転送するのが普通です。 これは、どんな内容の画像であっても同じような質で表現できる というのが主な理由ですが、情報量が一様に大きくなってしまいます。

 そこで、ラスター情報ではなく、ベクトル情報、即ち、 画像を多数の図形が集ったものと看做して、 その図形をどのようなものかということを なるべく少ない数値で情報化したものを転送することを考えました。 しかも、対象を「モノクロの線画」に限り、 画像分解能もあまり細かいものを想定しないということにすれば、 「線分」だけでベクトル情報を構成でき (丸い線は画像分解能程度の長さの線分が集った折れ線にしてしまう)、 情報量をかなり小さくすることができます。
 「ラスター」「ベクトル」の意味がわからない方は、 パソコン用お絵かきソフトにおける「ペイント系」「ドロー系」 の考え方を想定していただいても結構です。 画像情報を主としてラスターで扱うのが「ペイント系」ソフトで、 主としてベクトルで扱うのが「ドロー系」ソフトです。

 このような画像転送は、具体的には、大型計算機で算出した線画情報を 線画表示用の端末装置へ転送して表示するという形で行われました。 ベクトル画像を表現するためのプロトコル(約束事)も 種々考え出されましたが、結局Tektronixという会社が 401xシリーズと呼ばれる図形端末のために作った プロトコルが最も普及して、他社が互換品を作ったりするようになりました。 パソコンが普及し始めると、このプロトコルを解釈して 図形表示できるような端末ソフトを自作することも流行しました。

 そのうち、既存の文字情報専用の端末ソフトウェアを 改造してTektronixプロトコルを解釈できるようにしたい というニーズが発生してくるようになります。 それは、文字情報端末自体が高度化して、 簡単に手に負えなくなってきたという状況によるものです。

 具体的に私が遭遇した状況は2つです。 1つは、Kermitというファイル転送プロトコルを解釈する端末で 図形表示も行いたいという要望、 もう1つは、それまでのRS-232Cを介したTTY端末に代わって出てきた、 Ethernetを介したTelnet端末の登場です。

 このような場合、端末ソフトウェアを改造しようにも、 ソースが入手できなかったり、複雑過ぎて手に負えなかったりします。 そこで、端末ソフトウェアではなく、MS-DOSシステムの方を 改造してしまおうという発想が出てきました。 MS-DOSのシステムは、「デバイスドライバ」を組込んで 機能を追加できる構造になっています。 (これは元々unixから受け継いだ発想で、 Windowsにも引き継がれています。 Macintoshの「INIT」「Cdev」も同様のものです。)

 従って、Tektronixプロトコルを解釈して画面に図形表示する デバイスドライバを作れば良いというわけで、 このドライバができたわけです。 もっと具体的な開発経緯は、 アーカイブ中の「README.DOC」に記載されているので、ご覧ください。

 MS-DOSは基本的に文字ベースのシステムで、 図形関連の統一規格は全くありませんでした。 従って、ドライバはパソコンの機種に依存します。 私自身、PC-9801以外のMS-DOS機についての技術情報は ほとんど持ち合せなかったので、PC-9801専用になっています。 アーカイブはLHA形式です。




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1999年10月13日初稿/2004年4月21日ページ分離/2014年1月23日ホスト移転

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