「カルミナ・ブラーナ」の歌詞を
楽しく理解しよう

「だから何やねん」連載開始の1年余り前に NONCEに4回シリーズで連載された、 「だから何やねん」の先駆けとも言うべき企画です。 当時練習を進めていた第6回オータムコンサートのメイン曲目であった 「カルミナ・ブラーナ」(原曲は合唱曲)の歌詞が 変な日本語に聞こえるというFagott奏者高野佳和氏の話を元に 発展させたものです。

第1回(1995年6月号)

第22曲(Tempus est iocundum)に何回も出てくるaccelerandoの部分

ヨー ヨーヨー チョットスワレヨ ヤマモリ イキナリ ドブサラエヨ
オー オーオー トトゥスフロレオ イァマモレ ヴィルギナリ トトゥサルデオ
Oh, oh,oh totusfloreo iamamore virginali totusardeo
(掛声) 全て花盛り 恋に 乙女の 全て燃え盛る

ドブ ドブドブ サラエ ココホレヨ ココホレヨ ココホレヨ
ノヴス ノヴスノヴ サモルエスッ クオペレオ クオペレオ クオペレオ
novus, novus,novus amorest quopereo, quopereo, quopereo.
新しい is (連結)死ぬ

【大意】

鳴呼、全身が花咲くよう、今、乙女の恋に全身が燃え上がるよう
若々しい、恋は若々しい、だから死ぬほど恋焦がれている

【参考】

totusは英語の「total」の語源
伊語「tutto(a)」は音楽用語にも使う:例「con tutta forza」目一杯力強く
novusは仏語では「nouveau(ヌーボー)」英語では「new」
virginali:名詞形はvirgo=占星術なら処女宮(おとめ座)
形容詞形が英語の「virgin」(処女)の語源になっている



第2回(1995年7月号)

第12曲(Olim lacus colueram)のpiu mosso(男声合唱)の部分

イザイザ モットイケ トットト ソージセイ
ミゼルミゼル モドニゲル トゥストゥス フォルティテル
Miser,miser! modoniger etustus fortiter!
哀れな哀れな やっと黒い and焼けた 強く

【大意】

何と哀れな! 今や真っ黒焦げ!
(歌全体は、酔っ払いが焼鳥の生前の状況を
 無責任に思い浮べながら喰っている情景)

【参考】

miserは仏語ではmiserable(ミセラブル)となり、これに定冠詞をつければミュージカルで有名な小説の題名le miserable(レ・ミゼラブル)nigerの仏語読み「ニジェール」は現代の国名になっている(要するに黒人の国というほどの意味:英語名は「ナイジェリア」)
名詞形nigror(ニグロル)は英語のnegro(ネグロ:黒人)の語源
fortiterは伊語ではforte(フォルテ)

付録:タマには真面目にやってみよう

第1曲(O fortuna)冒頭4小節(Pesanteの部分)

オーフォルトゥナ ヴェルッルナ スタトゥヴァリアビリス
OFortuna, velutluna statuvariabilis
鳴呼運命の女神よ as if 姿態変りやすい

【文脈】

まず「月の満ち欠けのように気ままに変貌する運命の女神」と
呼び掛けた後、運命の前での無力さを嘆く歌詞が延々続く。

【参考】

fortunaという言葉は、本来は「運命」という抽象名詞で、英語の「fortune」の語源である。

lunaに起源を持つ形容詞「lunar(月の・太陰暦の)」が英語にある。 物語の登場人物名に「ルナ」は珍しくない(セーラームーンとか)。 statuは所有格で、主格は「status(スタトゥス)」であり、姿勢・状態・位置という意味から転じて地位という意味にも用いる。 英語では、そのまま読み方を変えて(ステイタス)使われている。

variabilisはvario(多彩である・変わる)という動詞から来ており、 英語ではこれを語源として動詞vary、形容詞various、variable、
名詞variation・ varietyなどの語が使われている。
「変奏曲」
の意味にも
使います、
念の為
「バラエティ」です、念の為



第3回(1995年8月号)

第1曲(O fortuna)急速部後半(f以降)の後半 (旋律が3度上がってff以降)

マテ ホラ シネコラ トテモ ソンナキデ
キン ホラ シネモラ コルデ プルスム タンギテ
Hacin hora sinemora corde pulsum tangite;
ここで 時の間に without休息 脈拍を 触れろ

コケ ソウデ シネモッペン
クォドペル ソルテム ステルニッフォルテム
quodper sortem sternitfortem
becauseby 運を 打ちのめす力を

エエトコーーーーデ コーケテ
メク モ--------ムネス プラ--ンギテ
(「モ」を5拍「ラ」を2拍伸ばして歌う)
mecum o--------mnes pla--ngite
私と共に 全ての人 嘆き悲しめ

【大意】

そこで、この間に、取り急ぎ、脈打つ心に触れよ
運のお陰で(彼女は)力ある者を打ちのめした
皆さん、私と一緒に嘆いてください

【解説】

horaは「時」(英語のtime)という意味だが、英語のhourの語源である
pulsumは目的格で主格はpulsus、英語ではpulse(パルス)
tangiteは2人称命令法現在で1人称直接法現在はtango
触れる→接すると意味が変化して、数学用語のtangent(正接)の語源
fortemは目的格で主格はforte、そのまま伊語で音楽用語



第4回(1995年9月号)

第22曲(Tempus est iocundum)第3リピートの第2波

カミノケナイ カミノケナイ ナイナイ ナイナイ ナイチビヤン ナイチビヤン
アニモヴェルナリ アニモヴェルナリ ラスラス ラスラス ラスキヴィエンス ラスキヴィエンス
animovernali animovernali las-las- las-las- lasciviens lasciviens
元気になる春により わがままなもの

【大意】

春になればスケベ心が元気になる (直前の「冬には男心も辛抱している」という歌詞を受けている)

【参考】

animoは「活性がつく」「生命が与えられる」というニュアンスの言葉であり、 英語のanimalやanimate(名詞形はanimation=アニメーション)の語源

付録:定演まで一月、思いきって本格的にやってみよう

第24曲(Ave formosissima)全文

アヴェ フォルモシシマ
Ave formosissima,
南無 最も美しい女
ゲンマ プレティオサ
gemma pretiosa,
宝石 貴重な
アヴェ デクス ヴィルギヌム
ave decus virginum,
南無 優美 乙女達の
ヴィルゴ グロリオザ
virgo gloriosa,
乙女 栄光の
アヴェ ムンディ ルミナル
ave mundi luminar,
南無 世界の 灯火
アヴェ ムンディ ロサ
ave mundi rosa,
南無 世界の 薔薇
ブランジフロ レッ ヘレナ
Blanziflor et Helena,
白い花 ヘレネ
ブランジフロ レッ ヘレナ
Blanziflor et Helena,
   
ヴェヌス ヴェヌス ヴェヌス ゲネロサ
Venus Venus Venus generosa!
ビーナス 高潔な女

【補足】

「ave Maria(アヴェ・マリア)」のaveと「南無」とイメージが違うと 言う人も多かろうが、それは仏教に対する偏見に過ぎない。 神仏などに対する呼び掛けの言葉という意味では同じである。

Blanziflorは辞書に無い言葉だが「白い花」という意味の合成語らしい (脚注参照)。 普段使わないような形で強引に1語にしたのは、 花と春の女神「Flora」と関連づけて「女神」にするためと考えられる。

Helenaはギリシャ神話の女神でスパルタ王の妻であり、 トロイの王子と駆け落ちしたためにトロイ戦争が起こったと言われている。

Venusは元々はローマ土着の「庭園と春の女神」だったのが、後に ギリシャ神話のAphroditeと同一視されて「美と愛の女神」になった。

【参考】

formosissimaは形容詞formoseの最上級女性形を名詞化したものだが、 この-issima(男性形-issimus、中性形-issimum)は 伊語では男性形-issimo、女性形-issima、 forte(f)やpiano(p)につければfortissimo(ff)やpianissimo(pp)

virginumは第1回に出てきたvirginaliと同じ形容詞の複数所有格形
gloriosaはgloriosusの女性形で、英語gloryの語源
4行目を除いて「-osa」で終る単純な脚韻になっていることにも注意



脚注

 この文章を書いた時点ではBlanziflorの意味は全く不明だったのですが、インターネット公開後に御覧になった方から情報をいただきました。 それによると、12世紀に成立した作者不詳の韻文物語に出てくる、異教徒と恋に陥ちるヒロインの名前をラテン語化したものだそうです。参考資料として、「日本フランス語フランス文学会編『フランス文学辞典』白水社,1974, p.651」という情報源も紹介していただきましたが、まだ確認できていません。

 なお、同じ方から、ラテン語文法の不正確な解釈をいくつか指摘いただいていますが、私自身が責任を持って改訂できるほどにはラテン語が理解できていないので、手がつけられずにいます。申し訳ありません。

 いずれにしても、情報提供者には深く感謝いたします。


1999年9月16日WWW公開用初稿/2000年8月8日最終改訂

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