「だから何やねん」連載開始の1年余り前に NONCEに4回シリーズで連載された、 「だから何やねん」の先駆けとも言うべき企画です。 当時練習を進めていた第6回オータムコンサートのメイン曲目であった 「カルミナ・ブラーナ」(原曲は合唱曲)の歌詞が 変な日本語に聞こえるというFagott奏者高野佳和氏の話を元に 発展させたものです。
ヨー | ヨー | ヨー | チョット | スワレヨ | ヤマモリ | イキナリ | ドブサラエヨ | ||
オー | オー | オー | トトゥス | フロレオ | イァ | マモレ | ヴィルギナリ | トトゥ | サルデオ |
Oh, | oh, | oh | totus | floreo | iam | amore | virginali | totus | ardeo |
(掛声) | 全て | 花盛り | 今 | 恋に | 乙女の | 全て | 燃え盛る |
ドブ | ドブ | ドブ | サラエ | ココ | ホレヨ | ココ | ホレヨ | ココ | ホレヨ | |
ノヴス | ノヴス | ノヴ | サモル | エスッ | クオ | ペレオ | クオ | ペレオ | クオ | ペレオ |
novus, | novus, | novus | amor | est | quo | pereo, | quo | pereo, | quo | pereo. |
新しい | 恋 | is | (連結) | 死ぬ |
鳴呼、全身が花咲くよう、今、乙女の恋に全身が燃え上がるよう
若々しい、恋は若々しい、だから死ぬほど恋焦がれている
totusは英語の「total」の語源
伊語「tutto(a)」は音楽用語にも使う:例「con tutta forza」目一杯力強く
novusは仏語では「nouveau(ヌーボー)」英語では「new」
virginali:名詞形はvirgo=占星術なら処女宮(おとめ座)
形容詞形が英語の「virgin」(処女)の語源になっている
イザ | イザ | モット | イケ | トットト | ソージセイ | |
ミゼル | ミゼル | モド | ニゲル | エ | トゥストゥス | フォルティテル |
Miser, | miser! | modo | niger | et | ustus | fortiter! |
哀れな | 哀れな | やっと | 黒い | and | 焼けた | 強く |
何と哀れな! 今や真っ黒焦げ!
(歌全体は、酔っ払いが焼鳥の生前の状況を
無責任に思い浮べながら喰っている情景)
miserは仏語ではmiserable(ミセラブル)となり、これに定冠詞をつければミュージカルで有名な小説の題名le miserable(レ・ミゼラブル)nigerの仏語読み「ニジェール」は現代の国名になっている(要するに黒人の国というほどの意味:英語名は「ナイジェリア」)
名詞形nigror(ニグロル)は英語のnegro(ネグロ:黒人)の語源
fortiterは伊語ではforte(フォルテ)
オー | フォルトゥナ | ヴェルッ | ルナ | スタトゥ | ヴァリアビリス |
O | Fortuna, | velut | luna | statu | variabilis |
鳴呼 | 運命の女神よ | as if | 月 | 姿態 | 変りやすい |
まず「月の満ち欠けのように気ままに変貌する運命の女神」と
呼び掛けた後、運命の前での無力さを嘆く歌詞が延々続く。
fortunaという言葉は、本来は「運命」という抽象名詞で、英語の「fortune」の語源である。
lunaに起源を持つ形容詞「lunar(月の・太陰暦の)」が英語にある。 物語の登場人物名に「ルナ」は珍しくない(セーラームーンとか)。 statuは所有格で、主格は「status(スタトゥス)」であり、姿勢・状態・位置という意味から転じて地位という意味にも用いる。 英語では、そのまま読み方を変えて(ステイタス)使われている。
variabilisはvario(多彩である・変わる)という動詞から来ており、 英語ではこれを語源として動詞vary、形容詞various、variable、
名詞 | variation・ | varietyなどの語が使われている。 |
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「変奏曲」 の意味にも 使います、 念の為 |
「バラエティ」です、念の為 |
マテ | ホラ | シネ | コラ | トテモ | ソンナキデ | |||
ハ | キン | ホラ | シネ | モラ | コルデ | プルスム | タンギテ | |
Hac | in | hora | sine | mora | corde | pulsum | tangite; | |
ここで | 時の間に | without | 休息 | 脈拍を | 触れろ |
コケ | ソウデ | シネ | モッペン | |
クォド | ペル | ソルテム | ステルニッ | フォルテム |
quod | per | sortem | sternit | fortem |
because | by | 運を | 打ちのめす | 力を |
エエトコーーーーデ | コーケテ | |
メク | モ--------ムネス | プラ--ンギテ |
(「モ」を5拍「ラ」を2拍伸ばして歌う) | ||
mecum | o--------mnes | pla--ngite |
私と共に | 全ての人 | 嘆き悲しめ |
そこで、この間に、取り急ぎ、脈打つ心に触れよ
運のお陰で(彼女は)力ある者を打ちのめした
皆さん、私と一緒に嘆いてください
horaは「時」(英語のtime)という意味だが、英語のhourの語源である
pulsumは目的格で主格はpulsus、英語ではpulse(パルス)
tangiteは2人称命令法現在で1人称直接法現在はtango
触れる→接すると意味が変化して、数学用語のtangent(正接)の語源
fortemは目的格で主格はforte、そのまま伊語で音楽用語
カミノケナイ | カミノケナイ | ナイ | ナイ | ナイ | ナイ | ナイ | チビヤン | ナイ | チビヤン | ||
アニモ | ヴェルナリ | アニモ | ヴェルナリ | ラス | ラス | ラス | ラス | ラスキヴィエンス | ラスキヴィエンス | ||
animo | vernali | animo | vernali | las- | las- | las- | las- | lasciviens | lasciviens | ||
元気になる | 春により | わがままなもの |
春になればスケベ心が元気になる (直前の「冬には男心も辛抱している」という歌詞を受けている)
animoは「活性がつく」「生命が与えられる」というニュアンスの言葉であり、 英語のanimalやanimate(名詞形はanimation=アニメーション)の語源
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「ave Maria(アヴェ・マリア)」のaveと「南無」とイメージが違うと 言う人も多かろうが、それは仏教に対する偏見に過ぎない。 神仏などに対する呼び掛けの言葉という意味では同じである。
Blanziflorは辞書に無い言葉だが「白い花」という意味の合成語らしい (脚注参照)。 普段使わないような形で強引に1語にしたのは、 花と春の女神「Flora」と関連づけて「女神」にするためと考えられる。
Helenaはギリシャ神話の女神でスパルタ王の妻であり、 トロイの王子と駆け落ちしたためにトロイ戦争が起こったと言われている。
Venusは元々はローマ土着の「庭園と春の女神」だったのが、後に ギリシャ神話のAphroditeと同一視されて「美と愛の女神」になった。
formosissimaは形容詞formoseの最上級女性形を名詞化したものだが、 この-issima(男性形-issimus、中性形-issimum)は 伊語では男性形-issimo、女性形-issima、 forte(f)やpiano(p)につければfortissimo(ff)やpianissimo(pp)
virginumは第1回に出てきたvirginaliと同じ形容詞の複数所有格形
gloriosaはgloriosusの女性形で、英語gloryの語源
4行目を除いて「-osa」で終る単純な脚韻になっていることにも注意
この文章を書いた時点ではBlanziflorの意味は全く不明だったのですが、インターネット公開後に御覧になった方から情報をいただきました。 それによると、12世紀に成立した作者不詳の韻文物語に出てくる、異教徒と恋に陥ちるヒロインの名前をラテン語化したものだそうです。参考資料として、「日本フランス語フランス文学会編『フランス文学辞典』白水社,1974, p.651」という情報源も紹介していただきましたが、まだ確認できていません。
なお、同じ方から、ラテン語文法の不正確な解釈をいくつか指摘いただいていますが、私自身が責任を持って改訂できるほどにはラテン語が理解できていないので、手がつけられずにいます。申し訳ありません。
いずれにしても、情報提供者には深く感謝いたします。