通算第63回(2002年1月号)

インターネット環境が普及し、メール人口も増えてきました。 昨年は団の運営上の連絡や議論をメーリングリストで進めて成功しています。 そこで、もっと活用しようという声が出てきました。 というわけで「基礎講座」です。

第13講:メーリングリストを使おう(第1回)

 電子メールを使ったことが無い人って最近は少ないと思います。 業務上の必要で已むを得ず使っている(使わされている?)人も多いことでしょう。

 メールには「宛先」がありますね。例えば、

To: motoo_y@fa2.so-net.ne.jp
と書けば、団のホームページでも公開している基夫さんのアドレス宛にメールが行きます。 メールを扱うソフトウェアによっては「To:」を変に和訳して表示したりすることがありますが、それは「そのパソコン上での表示」を細工してあるだけです。

 「To:」が「From:」に替われば、これは「宛先」ではなく「発信元」を意味します。 では「Cc:」は何だかわかりますか? これもメールの基本ですよ。

 実はこの「Cc:」というのは「Carbon Copy」の略です。 欧米のビジネスレターは伝統的にタイプライタで打たれてきましたが、このとき複数の便箋の間にカーボン紙を挟んで打つと、同じ内容の手紙が何通もできます。 この場合、直接タイプした1番上の紙が「正本」で、それ以外が「Carbon Copy」となります。 Carbon Copyは手元に控えとして残したり、仕事のパートナーに「こんな手紙を出したよ」という控えとして送ったりします。 そして、「控えを誰に送ったか」を正本の宛先者にも教える場合に、手紙の末尾に「c.c. 誰それ」とか「Cc: 誰それ」とか書く習慣があります。 この後者の書式がそのまま電子メールの書式に流用されたわけです。

 電子メールのCarbon Copyの品質は正本と全く同じですから、「To:」と「Cc:」の違いは単に「メインの宛先だよ」「サブの宛先だよ」という主張に過ぎず、大した意味がありません。 また、電子メールでは「Cc:」のみならず「To:」を複数指定して、同じ内容のメールを多数の相手に同時に正本として送ることができます。

 電子メールでNCEの運営上の打合せを行うのは1997年1月ごろから始まっていますが、演奏会に向けての早い時期の打合せに用いるようになったのは一昨年(2000年)です。 そこでは当然、「To:」や「Cc:」に複数名を指定したメールが飛び交っていたのですが、これでは少々困った問題が必然的に生じます。 それを解決する手段として「メーリングリスト」という仕掛けが登場するのですが、それは次回の話としましょう。



通算第64回(2002年2月号)

 前回は、宛先を多数指定した電子メールを飛び交わせて連絡や議論を進めてきたことを述べました。 今回は、この状況だと何が困るか、そして何故メーリングリストという仕掛けが必要かという話です。

第13講:メーリングリストを使おう(第2回)

 宛先が多数指定されたメールを扱った経験がある人って、それほど多くないかもしれませんね。 でも、扱った経験がある人なら「誰が宛先に含まれているか簡単には判別できない」ことを実感しているでしょう。

 例えば、宛先多数のメールに返信しますね。 確かに関係者全員が宛先に含まれているでしょうか? そのあたりはメールを扱うソフトがキチンとやってくれるのが普通なのですが、何かの事故で狂っていることもあります。その確認は簡単ではありません。

 あるいは、宛先多数のメールに他の誰かが返信したとしましょう。 それが元のメールの受取人全員に渡っているかどうかは、簡単にはわかりません。 もしかしたら、返信者が何かの理由で一部の人を宛先から外したかもしれません。 外された人を相手に、そうとは知らずに話をしたら、話が噛み合わなくなりますよね。

 それに、メールの宛先が長くなると、メールソフトの制限にひっかかることもありますし、そこまで行かずとも種々の事故が起りやすくなります。

 あるいは、宛先リストに誰かを追加しようということになったとします。 この場合、ちょっとした手違いで、追加前の古いリストに基づいてメールを発信してしまうという事故が簡単に起ります。

 このような不都合を避けるために、「多数の相手に送る」という作業を1ヶ所で集中管理することが考え出されました。 つまり、参加者は決められたアドレスに普通にメールを送ります。 ところが、このアドレスあてのメールを受け取ったメールサーバは、そのメールを多数コピーして、予め登録された宛先へ一斉に送ります。 この仕掛けをメーリングリストと呼びます。

 メーリングリストを利用すれば、どの参加者にも同じようにメールが行っている(特定の参加者にトラブルが発生した場合は、その期間の全てのメールが届かない)ことが保証されるので、話の行き違いを防ぐことができます。 また、宛先リストへの追加や削除の作業も1ヶ所で集中して行われるので、発信者などの条件によって追加されたりされなかったりという事態が避けられます。 そして何より各人のアドレス指定が簡単になりますね。



通算第65回(2002年3月号)

 前回まで、メーリングリストという仕掛けが何故必要かということを述べました。 これを踏まえて、メーリングリストの実際的な使い方やルールについて考えてみましょう。

第13講:メーリングリストを使おう(第3回)

 メーリングリスト経由のメールを受け取ったとして、それに返事を出したいとします。 実際問題としては、メーリングリストの内容に関連したメールを特定の個人に出すということもありますが、ここでは参加者全員に返事を出すことを考えます。

 当然ながら「From:」のアドレス、つまり元のメールの「発信者」に返信してはいけませんね。 メーリングリストのアドレスに返信する必要があります。 さて、通常の「返信」操作で返信して大丈夫なんでしょうか?

 通常、メーリングリストからのメールには「To:」や「From:」の他に「Reply-To:」という項目が設定されています。 そして、まともなメールソフトなら、「From:」よりもこの「Reply-To:」を優先して返信先を設定します。 だから、普通は大丈夫です。

 とはいえ、あくまで「普通は」であることを忘れないように。 「普通でない」状況が意外と頻繁に起こるのがインターネットの世界ですから、安心してはいけません。

 メールを出す直前に「To:」や「Cc:」の内容を再確認するのは、電子メールを扱う場合に身に付けねばならない最低限の習慣ですが、メーリングリストに参加する場合は、

参加していなかった時よりも、ずっとずっと確実に習慣づけること
を心掛けてください。 電子メールって出してしまったら取り返せませんからね。 通信障害が無ければ、数秒で全世界どこへでも行ってしまうのが電子メールです。 ポストの横で郵便屋さんが来るのを待ち構えて取り返すようなわけには行きませんからね。

P.S. 返信先指定に関連して、メーリングリストに参加する時は、「Reply-To:」を指定しないように手元のメールソフトを設定する必要があります。 というのは、多くのメーリングリストでは、元のメールの「Reply-To:」をメーリングリスト本来のものに置換えたりはしないからです(これには理由がありますが、今回は省略)。 細かいところは使っているメールソフトに依って違いますが、慣れた人が参加しているメーリングリストなら、誤って指定しているメールにスグ気付いて、指摘と対策指導がなされるでしょう。



通算第66回(2002年4月号)

 前回は、メーリングリストへの返信操作に関わるルールについて見てみましたが、他にも技術的理由から帰結されるルールがあります。

第13講:メーリングリストを使おう(第4回)

 メーリングリストを使っていると、ついつい「読者が多数」であることを忘れてしまうことがあります。 議論が白熱していくうちに、特定少数だけで盛り上がってしまい、周囲で全部読まされる側はたまったものではない、なんてこともよく起りますが、これなどは実際に顔を突き合せて会議をする場合にも通じる注意事項です。

 電子メールという媒体に特有なのは「巨大メール」の問題でしょう。 最近は「書類添付」という仕掛けが普及して、「純粋な文字情報」以外の、画像や「書式付き文書」を気軽に送付できるようになりましたが、気軽に過ぎるのも考えものです。

というような技術的問題があることを、一応は頭に入れておきましょう。 このような巨大な情報を、多数の相手に一斉に送りつけるとなると、メール配送に関わる多数のシステムの中のどこでどんなトラブルを起こすか判りません。

 ある会社で、社内メーリングリストに巨大画像を流した人が居たそうです。 社内ですから、1つのメールホストの中にその巨大画像のコピーが大量に作られる結果となり、メールシステムがパンクしてしまったとか。 団のメーリングリストでは、参加者が多数のメールホストに分散していますから同じ問題は起りませんが、分散しているゆえに別の問題が考えられます。

 というわけで、メーリングリストで「書類添付」は「原則禁止」と考えてください。 世の中には、技術的に添付書類を配送不可能にしているメーリングリストも多数存在します。秘匿を要するファイルでなければ、WWWページに貼り付けてURLを通知する方が優れています。 本当に必要な人だけがファイルを取りに行きますし、タイミングもズレるので、通信の集中が避けられるからです。


 4回にわたって「メーリングリスト」の説明をしてきましたが、世の中には「メーリングリスト」と似て非なるものがあることにも注意しましょう。 最近、基夫さんが「緊急連絡メール」の運用を始めましたが、これは「メーリングリスト」ではありません。 返信しても基夫さん1人にしか届かないからです。 面倒に思うかもしれませんが、必要最小限の技術的知識を確実に身につける努力が電子メディアには欠かせないのです。



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