通算第34回(1999年8月号)

 今度の演奏会のメイン曲「ぐるりよざ」冒頭のグレゴリオ聖歌はラテン語の歌です。 そこで、ラテン語の読み方について考えてみましょう。

随時講座:合奏中の話題から(その4)

 いきなりですが、ラテン語には驚くほど様々な流儀の読み方があります。 でも、ラテン語という言葉は1つです。何故こういうことが起こったのでしょうか。

 これは、つい数百年前までのヨーロッパでは、ラテン語が唯一「書き言葉」に使える「公用語」だったことに関係しています。 教会や大学などでは会話もラテン語だったのですが、「書き言葉」として統一されている以上は、読み方に少々の癖があっても、意思疎通にはそれほど困らなかったのです。 特に文通には全く支障無しです。

 ラテン語は本来「厳格なローマ字読み」をします。 1つの文字には1つの発音しかありません。 ところが、長い年月のうちに、自国語の発音習慣に合わせるようになってきました。 例えば、「c」という文字は、本来は「カ行」の音「カキクケコ」にしか使わないのですが、仏英では「カシクセコ」、伊独では「カツィクツェコ」となりました。 「j」と「v」も本来は「i」や「u」が半母音化したもの、つまり「ヤ行」と「ワ行」なのですが、「j」は仏英では「ジャ行」ですし(日本語でも「ヤカマシイ」が「ジャカヤシイ」に訛りますね)「v」は大多数の国で唇を噛んで出す音になってしまいました。 (ちなみに「y」は本来は口を丸くして「イ」と言って出す音を表わし、専らギリシャ語起源の言葉に用います。 「w」は後世になってから発明された文字です)。

 o gloriosadomina, excelsasuper sidera,
本来の読み グロリオサドミナ エクスケルサスペル シデラ
イタリア流 グロリオザドミナ エクスツェルサスペル シデラ
隠れ切支丹 ろりおざどみな えちぇさすぺ しでら

quite creavitprovide, lactastesacro ubere
クウィ クレアウィップロウィデ ラクタステサクロ ウベレ
クウィ クレアビップロビデ ラクタステサクロ ウベレ
くぃ れあびろびで らたてさろ うべれ

【参考資料】

http://www.etl.go.jp/etl/People/mab/data_lib/music_dic/pron_history_j.html
http://lt.sakura.ne.jp/~ikeda/music/about-messe3.html
http://www.u-gakugei.ac.jp/~mayama/diatoms/LatenPronaunciation.htm



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Copyright © 1999 by TODA, Takashi