通算第46回(2000年8月号)

 定演のメイン曲「パリのアメリカ人」に関連して、映画の「パリのアメリカ人」について見てみましょう。

随時講座:合奏中の話題から(その6)

 映画があるからといって、「パリのアメリカ人」が“映画音楽”なわけではありません。 曲は1929年に出版されていますが、映画は1951年の作品です。 即ち、既存の音楽からイメージを膨らませて作った映画なのです。 とはいえ、Gershwin自身の体験に基づいたものと言われている音楽をそのまま映画化したわけではなく、具体的なストーリーは別途作られています。 第二次世界大戦のあと現地除隊になった米軍兵士がそのまま居ついたという設定は時代を反映していますね。

 映画の音楽はGershwin自身が担当しており、特にフィナーレ(主人公とヒロインを中心とした舞踊)は「パリのアメリカ人」の音楽で踊っています。 尤も、作曲者自身が20年余り経っての心境の変化もあるでしょうし、映画に合わせた改変と思われる部分も多く、元の音楽そのままではありません。 しかし、「パリのアメリカ人」の古い録音というのは意外と入手困難ですし、作曲者自身のこの曲に対する考えを推し量るうえでも参考になるかもしれません。 フィナーレの音楽は以下のような構成になっています。

冒頭前奏(約19秒)〜原曲冒頭から(13)まで〜追加10小節〜原曲(20)から(25)まで
〜(42)の4小節前(弦とFluteだけで最初からゆっくり)から(45)4小節目まで
〜新作部分約4分半(約50秒後に(69)の8小節目から(70)まで、
 その約40秒後に(13)の2回反復と(14)冒頭5小節間が出てくる)
〜(45)5小節目から(47)2小節前まで〜(50)2小節前から(52)1小節目まで
〜前奏2小節〜(29)から(35)まで〜(36)から(38)7小節目まで〜直後3小節を改変した間奏
〜(57)から(64)の3小節目まで〜(74)5小節目から末尾までを大幅に改変したもの
CDを聴いてスグわかるような編曲改変としては、以下のようなものがあります。
冒頭4小節:Flute&Fagottなど削除
(9)の前6小節間:各小節頭にpizzicato/最後は弦の上昇音階を追加し変拍子解消
(11):4小節進んだ後、追加4小節を挟んで、再度最初の4小節へ戻って先へ進む
(23)〜(24):最初にSaxの無伴奏soloを入れ、ダブルリードは短縮
(32)〜(37):Fluteの16分音符に全てPiccoloを重ねてある



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