通算第133回(2007年11月号)

 春の演奏会では、課題曲シリーズの1曲として「交響的舞曲」を採り上げます。 この曲は「タランテラ」であると作曲者は書いているのですが、このことについて見てみましょう。

随時講座:合奏中の話題から(その18)

 「タランテラ(tarantella)」はナポリを中心とするイタリア南部が発祥の踊りで、「タラントーラ(tarantola)」=英語では「タランチュラ(tarantula)」が語源であるという説が有力です。 毒蜘蛛に刺された人が、毒が回って踊り狂いながら息絶える様子を踊りにしたというわけです。 確かに8分の6拍子の激しい曲想は、この説にピッタリです。 しかし、その一方で、毒蜘蛛に刺されたときに、この「タランテラ」を踊ると助かるという説もあるようです。 同じ毒蜘蛛がらみで、死ぬのか助かるのか全く正反対の説があるというのも面白い話ですね。

 舞曲の種類で動物の名が語源のものを探してみたところ、何故か「タランテラ」とは全く対象的に優雅な「パヴァーヌ(pavane)」が出てきてしまいました。 この名前自体はフランス語ですが、語源はスペイン語で孔雀を意味する「パヴォ(pavo)」のようです。 孔雀が羽根を広げているような、のんびりした雰囲気というわけです。

 ところで、「タランテラ」の語源はナポリ東方の海沿いの街「タラント(taranto)」であるという説もあるようです。 さらに調べてみると、そもそも「タラントーラ」自体が「タラント産の蜘蛛」という意味らしいことが判りました。 こうなってくると、どっちがどっちの語源なのか解ったものではありません。

 もちろん、地名が語源であることが明らかな舞曲名も多々あります。 「○○地方の踊り」という発想の命名なわけですね。 有名なものとして「ポーランド風」というフランス語がそのまま舞曲名になった「ポロネーズ(polonaise)」を挙げることができます。 同じく地名のフランス語表記を語源とするものに「エコセーズ(ecossaise)」があります。 これは「スコットランド風」という意味なのですが、実際にはイングランドあたりの舞曲も一緒くたにしてエコセーズ扱いしていたようです。



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