通算第134回(2007年12月号)

 前回に引続いて、春の演奏会で課題曲シリーズとして採り上げる曲を見てみます。 今回は「K点を越えて」の標題に使われている「K点」について見てみましょう。

随時講座:合奏中の話題から(その19)

 「K点を越えて」は英題を「beyond the critical point」としています。 「K点」の訳が「critical point」なわけです。 ところが、この曲は長野オリンピックをイメージして作られたということになっています。 これはちょっと変なんですよね。 というのは、長野オリンピックの時には「K点≠critical point」だったからです。

 「K点」というのはノルディックスキー競技のジャンプ種目の用語です。 この用語が日本で一般に知られるようになったのは札幌オリンピックのときです。 実は、この当時は「K点=critical point」だったのです。 目新しい言葉が広まって「それは一体どういう意味なんだ?」という注目を集め、多くの人が詳しい解説に触れて納得しました。 そのため、この当時の理解が未だに広く膾炙しているのでしょう。

 「critical point」という英語は、ドイツ語の「kritischer Punkt」を訳したものです。 このドイツ語の頭文字を採って「K点」と呼んでいるわけです。 スキー用語として使う場合には「極限点」と訳すことが多いようですが、別の分野では「臨界点」と訳す場合もあります。 例えば、原子炉で事故が起こる度に出てくる「臨界」という言葉が該当します。 原子炉の場合は核分裂が連鎖反応を起こして継続的に進行するギリギリのところ、あるいはそこを越えてしまった状況を「臨界」と呼びます。 つまり「臨界」とは「そこを境目として何かが起こったり変わったりする」場所のことなのです。 ジャンプ競技のK点は「そこを越えると危険」という意味でした。ですから「危険(kiken)」のKという覚え方をしている人も多いと思います。

 K点は各々のジャンプ台ごとに、設計上のラインとして設定されるものです。 元々は、K点に達することは不可能という前提で設計されていました。 ところが、競技技術が発展して、不可能だったハズの「K点越え」が普通にできてしまうようになりました。 また、元々はK点以遠は傾斜路が平坦になって着地が危険と考えられていたのですが、これも着地技術の進歩によって危険で無くなってきたのです。 そこで、現在では「K点」という略称を変えずに正式名称だけが「Konstruktionspunkt(建築基準点)」に変更されています。 ジャンプ台の設計上の想定位置ですから、これで辻褄が合うわけです。

参考文献

Wikipedia「K点」



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