通算第244回(2017年2月号)

 春の演目に挙がっている曲の1つ「Kaleidoscope」の題名の意味について見てみましょう。

随時講座:合奏中の話題から(その24)

 「kaleidoscope(カレイドスコープ)」は「万華鏡」のことです。 単純な原理の道具なので古くからあるものかと思いきや、丁度200年前の1817年に特許が成立した、比較的新しいもののようです。 性能の良い、つまり歪みが少なくて反射率が高い鏡を安価に入手できることが前提になるので、容易には作れなかったのかもしれません。

 「kaleidoscope」はギリシャ語を起源とする発明者の造語で、「kal+eido+scope」という構成です。 最後の「scope」は顕微鏡が「microscope」望遠鏡が「telescope」ということで、同じように「筒状のものを覗いて見る道具」ということで納得できますね。

 「kal」は元の形が「kalos」で「美しい」という意味です。 英語では「kal」ではなく「cal」という形になる方が多いようで、例えば「calligraphy」(カリグラフィ)という言葉があります。 文字に装飾を施して美しく書き記すことや、詩を書き記すときに意味がある形に文字を配置することを指します。また、書道のことを説明的に「東洋のcalligraphy」と表現することもあります。

 「eido」は元の形が「eidos」で「形」という意味です。 ただ、この言葉はアリストテレス哲学の用語「エイドス(形相)」として有名かもしれません。 アリストテレスは「物の存在とは何か」という議論の中で「質料(ヒュレー)」と「形相」を対置しました。 例えば木で家を作る場合、材木が「質料」で、それを使って「家」という実体を作り上げる概念的な部分が「形相」です。

 結局、「kaleidoscope」とは「美しい形を覗き見る道具」という意味です。 「形が色々と変化する」という部分が表現できていないところが難点とも言えます。 日本語の「万華鏡」は「まんげきょう」という読みが現在では定着していますが、最初は「ばんかきょう」という読みもあったようです。 また「百色眼鏡(ひゃくいろめがね)」「錦眼鏡(にしきめがね)」という呼び方もあったようです。 「万」というところに「沢山のパターンに変化する」ことが表現できているという意味では優れた訳とも言えます。

参考文献

Wikipedia「万華鏡」「形相



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