通算第246回(2017年3月号)

 春の演目の1つ「Hymn to the Fallen」について見てみましょう。

随時講座:合奏中の話題から(その26)

 「hymn」は賛美歌の意味です。 「fallen」は動詞「fall」の過去分詞ですが、この場合は「fallしたもの」という意味の集合名詞的用法です。 「fall」には「落ちる」という意味もありますが、この場合は「倒れる/斃れる」、特に「戦死する」という意味です。 つまり、曲の題名を訳すと「戦没者たちへの賛美歌(賛歌)」となります。 映画「Saving Private Ryan」のために作曲されたもので、広報等では映画のテーマ曲とも言える扱いを受けているようです。 映画本編中ではエンドロールで流れます。

 映画の題名にある「private」は元々は「私的な」という意味ですが「公的な立場ではない」というニュアンスになることがあり、そこから「役職が無い兵卒」を意味するようになったようです。 通常「private Ryan」は「ライアン一等兵」と訳されますが、これは旧日本陸軍の習慣に従った呼び方です。 日本語だと「二等兵/一等兵/上等兵」と短い表現で呼び分けできますが、英語だと説明的な表現になってしまうので、特に必要が無ければ区別せずに単に「private」と呼びます。 (ライアンを二等兵としているテキストも多いのですが、映画中では二等兵を一等兵に修正した痕跡のある階級章を付けており、ここでは前線で昇格したという説を採っておきます。)

 「saving」の「save」は、この場合は「救出」という意味です。 つまり映画の題名はとりあえず「ライアン一等兵の救出」と訳せますし、「〜を救出せよ」というニュアンスにもなります。 いずれにしても映画の雰囲気に合わないと判断したのでしょうか、日本語版のDVD等では「saving」を外して「プライベート・ライアン」になっています。

 舞台は第2次世界大戦ノルマンジー上陸作戦直後のフランスです。 ライアン一等兵は4兄弟の末っ子ですが、他の3人が同時期に戦死してしまい、上層部の命令で前線から撤退させることになりました。 しかし、空から敵地に降下したため、所在がハッキリしません。 そんなたった1人のために8人が命を懸ける(最終的に5人が戦死)という理不尽とも言える状況を通して、戦争について考えさせる作品になっています。



「だから何やねん」目次へ戻る

Copyright © 2017 by TODA, Takashi