通算第263回(2018年9月号)

 秋の演奏会で採り上げる「Clarinet Candy」についての話題です。

随時講座:合奏中の話題から(その28)

 最初にお詫びですが、いろいろ探したものの「Clarinet Candy」という題名の意味についての確実な情報は見つけられませんでした。 そこで「candy」という語彙についての用例などの情報から考えてみたいと思います。

 少し詳しい英語の辞書を索くと、英米で「candy」という語のニュアンスがかなり違うことが判ります。 この単語はアラビア語から英語に入ってきたようで、「結晶状の砂糖」つまり「氷砂糖」の意味です。 イギリス英語ではこの元々の意味で使われます。

 しかしアメリカ英語では、わざわざ「rock candy」(直訳すると「岩キャンディ」)と言わないと「氷砂糖」の意味だと理解してもらえない可能性が高いようです。 アメリカ英語の「candy」には「飴/砂糖菓子」という訳語を充てている辞書が多数です。 そして、それはイギリス英語の「sweets」に相当すると説明している場合もあります。

 結局、「candy」はイギリスでは単なる「砂糖の塊」であるのに対して、アメリカでは「嗜好品としての甘いもの」なんですね。 日本語の「キャンディ」より意味が広く、チョコレートなども含まれます。 日本語で最近使われることが多くなった「スイーツ」の方が、まだ意味が近いかもしれません。

 しかも、英米とも「candy」は集合的に使われる傾向があるようです。 つまり「沢山の塊が集まったもの」というニュアンスなのです。 「個々の塊」のことは「a piece of candy」と呼びます。 特にアメリカ英語では複数形の「candies」は「複数種の飴」という意味になり、単一種の飴は沢山あっても複数形にはなりません。

 作曲者のアンダーソンはアメリカ人ですからアメリカ英語で考えるべきでしょう。 つまり「嗜好品としての甘いもの」が沢山集まっているイメージです。 1962年の作品という時代性を考えると、四角いガラス瓶に飴がギッシリ詰まっているイメージで捉えれば良いのかもしれません。



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