現在広く使われている五線譜の源流とされているのは、10世紀ごろに使われ始めた「歌詞を文字で書いたもの」に付記した記号群で「ネウマ」と呼ばれています。 当初は音高の相対的な動きや音の伸ばし方の要領を書き留めたものだったのですが、横線を引いて絶対的な音高を表示し、音符の形で音の長さを表示し、休符を導入し、タイミングを合わせる目安として縦線(小節)を導入するというように発達してきました。
音符や休符の形が現在に近い形に落ち着いたのは15世紀ごろのようです。 現在では種類の違う音符の長さの比は「2:1の冪乗」に統一されていて3連符や5連符は例外扱いですが、当初は曲によって2:1だったり3:1だったりするというようなルールだったようです。 そして現在と最も大きく違うのは「全音符が1拍というのが原則」だったことです。 四分音符が1拍というのを原則とする現状は「4拍子が普通」になったことと表裏一体と考えられますが、その経緯はあまり単純ではなさそうです。
「全音符が基準」ということを前提に休符の形について考えてみましょう。 八分休符が現在の感覚では32分休符に相当することになるわけですから、それ以上細かいのの出番はあまり無さそうです。 一方の長い方については、倍全休符、四倍全休符、八倍全休符といったものが普通に使われることになります。
連続して何小節か休みになることを示すのに「H」を横に伸ばしたような記号(𝄩)に数字を添えるのが一般的ですが、「工」の縦棒を太くした形(𝄺)を第3線と第4線の間に書いて「2小節休み」とすることもあります。 これが古くから使われている倍全休符で、それを上半分だけにしたのが全休符(𝄻)、下半分だけにすれば二分休符(𝄼)です。 逆に第2線から第4線までの倍の長さにすれば四倍全休符で、現在でも「4小節休み」に使われます。
そして、二分休符より細かい四分休符と八分休符は“┌”や“┐”を第3線と第4線の間に書いて表しました。 この後者が変化したのが現在の八分休符(𝄾)です。 一方の四分休符は元々は現在の八分休符を裏返した形だったのですが、頻出するのに視認性が悪いのは不都合と考えたのか、上下にヒゲを付けて現在の形(𝄽)になりました。 その前の古い形がヨーロッパの一部では今でも使われているというわけです。
https://www.salicuskammerchor.com/single-post/2015/12/22/第3回-ネウマとは
https://note.com/ikejiri_violin/n/nabbd93616b50