「Fathoms Below」は「何fathomも下」という意味で、海底の世界を水面から見ているわけです。 この「fathom」が「長さの単位」であることは見当がつくと思いますが、実はこの単位を使うことで「海の世界」であることを表現できる側面があります。
長さの単位はm(メートル)に統一されつつありますが、歴史的には様々な場面で各々の都合に応じた単位が使われてきました。 よく使われたのが人間の身体部位を基準とする「身体尺」と呼ばれるものです。
身体尺には特別な道具を使わずに簡単に測定できる利点がありますが、当然ながら誰を基準にするかで結果が変わってしまいますし、基準になる人を決めたとしても正確な測定はできません。 そこで、身体尺を起源とする単位も身体以外の基準に基づくように変わっていきました。 例えばヤードポンド法ではどの長さの単位もft(フィート)を基準に定め、ftを何らかの方法で正確に定義する(例えば1 ft=0.3048 mと定義したものが「国際フィート」と呼ばれている)ことになっています。 1 fathomは6 ftです。
しかしながら、それでも各地で様々な流儀が混在する状況は解消できませんでした。 それを何とかしようとした結果が、メートル法やその発展形であるSI単位系です。
fathomも身体尺の1つで、尺貫法の「尋(ひろ)」と同様に両腕を広げた長さが起源で、実際に「尋」と訳されることもあります。 しかし、これだけなら「海の世界」限定の単位にはなりません。 これはおそらく、陸上ではfathom以外にも様々な単位が併用されていたということが背景になっていると思われます。 例えば屋外の距離を表現するのに日常的に使われるのはyard(ヤード)=3 ftですし、陸上測量では道具に使う鎖の長さを起源とするchain(チェイン)=66 ftが使われてきました。 競馬などではfurlong(ファーロング/ハロン)=660 ftが使われます。 このような様々な単位との対比でfathomが「海の単位」のイメージになったと考えられます。