滋賀県の郡:現行郡と近世郡の対応

このページの内容は、地図があると理解しやすいと思います。
平成大合併前の市郡境界図を用意しましたので、よろしければご参照ください。

 全国的にみて、郡というのは、東北地方の一部などを除いて、律令時代から江戸時代に至るまで、それほど大きくは変わっていません。 しかし、明治初期に「郡」を実質的な地方行政単位としたため、行政の現場の都合に合わせた大々的な統廃合や分離が全国的に行われました。

 その中で、滋賀県は「市」への昇格によって郡から外れるケースを除いて江戸時代の郡がほぼそのまま引き継がれたという、全国的にも珍しい例になっています。 郡そのものが増減するような変動は、全域が「市」に昇格して自然消滅したものを除けば、浅井郡が東西に分離したあと、西浅井郡が伊香郡に併合されたのみです。

 ちなみに、西浅井郡は平成大合併前の西浅井町に一致します。 地図を見ると、東浅井郡と地続きになっておらず、間に伊香郡が挟まっています。 何故これが「浅井郡」という1つの郡だったのか不思議な気もしますが、おそらく湖上交通によって古くから深く結びついていたのでしょう。

 とはいえ、細かく見ると、郡の境界が明治以降変動している部分も少なくはありません。 また、市になった部分が元々何郡だったかということも、現在の地図からは読み取れません。

 そこで、「滋賀県市町村沿革史」(弘文堂書店)に基づいて、平成大合併直前の市郡と明治初期の郡(江戸時代の郡をほぼ踏襲していると思われる)との対応をまとめてみました。

平成大合併直前の市域

◆大津市:瀬田川以西(以北)は滋賀郡、以東(以南)は栗太郡
◆草津市・栗東市:全域栗太郡
◆守山市:大部分は野洲郡、旧物部村(横江・大門・今宿・勝部・浮気を含んでそれ以南の領域)のみ栗太郡
◆近江八幡市:大部分は蒲生郡、旧北里村(佐波江・野村・小田・江頭・十王)のみ野洲郡 (なお、水茎は戦後まで湖の下)
◆八日市市:中心部とその東方および北方は神崎郡、八日市IC以南および太郎坊宮以西は蒲生郡 (中心部の正確な境界は区画整理および住居表示のため現地図では見えません。 ちなみに、金屋は蒲生郡が神崎郡に向かって突き出ていた地域のようです。)
◆彦根市:大部分は犬上郡、旧葉枝見村(新海・田附・南三ッ谷・善光寺・本庄・下稲葉・上稲葉・服部)は神崎郡、旧稲枝村と稲村(石寺・稲里・金沢・海瀬・三津を含んでそれ以南のうち旧葉枝見村以外の部分)は幸崎・上西川・田原・出路のみ神崎郡で他は愛知郡、旧鳥居本村(佐和山以東でかつ彦根ICを含んで以北)は坂田郡
◆長浜市:全域坂田郡

彦根市がこんなにややこしいとは、調べてみるまで全く知らなかった^_^;

平成大合併直前の郡域

平成大合併直前段階の郡が明治初期の郡と一致していないのは以下の通りです。

高島町鵜川は滋賀郡
浅井町相撲庭は坂田郡
日野町下駒月は甲賀郡(不自然だけど間違いなさそう)
永源寺町の旧市原村部分は蒲生郡(境界は八日市市内の境界の延長、なお念のため、和南は神崎郡で甲津畑は蒲生郡)
永源寺町の旧東小椋村・高野村部分(愛知川以北で黄和田は全域含む)は愛知郡
伊吹町の旧東草野村部分(下板並を含んで以北)は東浅井郡

明治初期の郡役場の所在地

各郡の中心地と考えられる場所であり、各郡名の地名としてのイメージを、本来有するべき場所です。

滋賀=大津、栗太=草津、野洲=守山、甲賀=水口、蒲生=八幡、神崎=八日市、愛知=中宿(平成大合併前の愛知川町=現愛荘町)、犬上=彦根、坂田=長浜、東浅井=速水(平成大合併前の湖北町)、伊香=木之本、高島=今津
郡境界に近接している郡役場が意外と多くあります。 守山や八日市は、モロに郡境界に接した大字ですし、長浜や彦根も郡境界にかなり近い場所です。

参考:平成大合併後の市域についての概要

大津市・草津市・栗東市・守山市・近江八幡市・彦根市については、合併していないか、合併後も状況が変わっていません。 甲賀市・湖南市は全域甲賀郡です。 米原市と高島市は、上述の「伊吹町の旧東草野村部分は東浅井郡」「高島町鵜川は滋賀郡」という状況を引き継いだ他は、全域が各々坂田郡および高島郡です。

東近江市は、元々八日市市と永源寺町が複雑だったことに加えて、愛知郡の町を編入してしまったために、更に複雑怪奇になっています。 長浜市は、元々「全域坂田郡」だったのに、平成大合併で編入した町は全て東浅井郡、その後も東浅井郡と伊香郡の町ばかり編入したために複雑になってしまいました。


1999年7月22日初稿/2017年8月11日ホスト移転・最終改訂

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