「Coriolis(コリオリ)力」は「遠心力の差分」で説明できるという話があります。 間違いではないのですが、誤った理解をしてしまいやすい説明なので、注意が必要です。
まず、この話は「円周方向の運動」に対するCoriolis力にしか適用できません。 「円周」というのは「回転している場」の「回転中心」を中心とする円の「円周」のことです。 つまり回転中心に近づいたり遠のいたりする場合には成立しない話です。
まあ、これは直感的に自明かもしれません。 「遠心力の差分」で説明しようというのですから、遠心力の方向に働く力、つまり回転中心に対して真っ直ぐに遠ざかるか近づく力しか出てきません。 Coriolis力は運動に対して直交する方向に働きますから、出てくる力がこの方向になるのは運動が遠心力の方向と直交する場合、つまり回転中心を真横に見る場合のみです。
力の「差分」を考えるということは、2つの力を比較するということです。 この「2つ」は何かというと、2つの「回転系=回転観測者」から見た力です。
例えば、回転している実験室内でボールを投げる状況を考えてみましょう。 通常、実験室に相対的に静止した状態で回転している観測者の立場で記述しますが、この立場を「ボールの立場」と比較する必要があるのです。 言い換えると、飛んでいるボールが静止して見える速さで回転している観測者です。
この2種類の観測者は回転速度が違うから、ボールに作用する遠心力の大きさも当然違ってきます。 その差が、「実験室に相対的に静止した観測者」から見た、ボールに作用するCoriolis力になるという話なのです。
この説明がよく出てくるのは、遠心力からCoriolis力を算出する手順が高校レベルの微分法で済むというのも大きな理由です。 しかし、計算が比較的楽なのに対して、考え方自体が頭を混乱させるものだ、というところが要注意です。