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直交曲線座標における第一基本量

一般に座標系の性質は第一基本量(基本計量テンソル、 または単に「計量(メトリック)」とも呼ぶ)という 対称テンソルで表現できることが知られている。 読者はこの概念の微分幾何学的意味を正確に知っている必要はない。 ただ、以下に述べる事実を知っておいてもらいたい。

3つめの事実について詳しく説明する。第一基本量対角成分の平方根を 順にg1, g2, g3とする。このとき、x1座標が微小量$\Delta$だけ 異なっていて、他の座標が同じであるような2点の間の距離が $g_1 \Delta$である。 逆に言うと、x1座標軸に沿って $g_1 \Delta$だけ進むと、x1座標が 微小量$\Delta$だけ変化するということである。 また、座標軸の網目を考えると、g1というのはx2x3座標面の間隔に 比例する量であると言うこともできる。

$\eta=g_1g_2g_3$と定義する。この量には特に名前はないが、 座標軸の網目で囲まれた微小直方体の体積に相当し、以下によく出てくる。

:座標系 (x1,x2,x3)を具体的な文字を使って 例えば(x,y,z)と書く場合には、それに対応して
(g1,g2,g3)を (gx,gy,gz)と書く

:(1) (x1,x2,x3) = (x,y,z), gx = 1, gy = 1, gz = 1 :直交直線座標
(2) $(x_1,x_2,x_3) = (r,\theta,z)$, gr = 1, $g_\theta = r$, gz = 1 :円柱座標
(3) $(x_1,x_2,x_3) = (r,\theta,\lambda)$, gr = 1, $g_\theta = r$, $g_\lambda = r\sin\theta$ :極座標
(4) $(x_1,x_2,x_3) = (r,\lambda,\phi)$, gr = 1, $g_\phi = r$, $g_\lambda = r\cos\phi$ :極座標

(3)と(4)の違いは「緯度」の定義の違いである。

(3)では北極で $\theta=0^\circ$、赤道で $\theta=90^\circ$、 南極で $\theta=180^\circ$

(4)では北極で $\phi=90^\circ$、赤道で $\phi=0^\circ$、 南極で $\phi=-90^\circ$

となる。(3)の緯度を「余緯度」と呼ぶこともある。 物性物理では(3)、地球物理では(4)を用いることが多い。



Ichiro Tamagawa 平成11年9月24日