「節分」と「大晦日」の関係

 「節分」は「大晦日(おおみそか)」のようなものだという言い方をすることがあります。 確かに、よく似ていますし、密接に関連するものではありますが、「同じもの」というわけではありません。

 「節分」(注1)は「立春」の前日、「大晦日」は「元日」(注2)の前日です。 そして、「立春&節分」と旧暦の「元日&大晦日」は必ず同じ時期になり、そのズレは最大で約半月です。 また、約30年に1回の確率で両者は一致します。

 もう少し具体的にいうと、旧暦の「元日」は「立春に最も近い朔日(新月の日)」であると考えて、概ね間違いではありません(注3)。

 「元日」は言うまでも無く「1月1日」ですが、旧暦の日付は月の朔望(満ち欠け)に基づいて決められており、「1日」は必ず「朔日」です。 それに対して、「立春」は純粋に太陽の位置(黄経)のみで決まる日なので、月の運行とは無関係です。 ですから、旧暦の「元日」(春節)と「立春」は、一般には一致しないのです。 しかし、完全に一致しないとはいえ「だいたい一致する」という意味で「基準」にはなっているわけです(注4)。 つまり、「立春」は旧暦年始(旧正月)の基準なのです(注5)。

 また、日本の年始行事には「元日&大晦日」を基準に日程が決まっているものと「立春&節分」を基準に日程が決まっているものとがあるわけですが、元々同じような時期に行われる行事ですから、どちらで日程を決めるかが地域や時代によって違っていたり、似たような発想で各々の行事が行われたりすることもあります。 そういう意味でも、共に「前日」である「節分」と「大晦日」に、ある種の共通性が生ずるわけです。

注1:細かいことを言うと、一般に「節分」と呼ばれている日は、厳密には「春の節分」と呼ばねばなりません。 「節分」とは「季節の分け目」であり、「暦の上で各季節が終る日」のことです。 つまり、「暦の上で各季節が始まる日」である、「立*」(*=春夏秋冬)の前日は全て「節分」です。 そして、そのうち「立春」の前日である「春の節分」のことを、一般には単に「節分」と呼んでいるわけです。 (「春」の1つ前の季節である「冬」が終る日のことを「春の節分」と呼ぶので、混乱しないようにしてください。)

注2:「元日」と「元旦」を混同している人が多いのですが、本来「元旦」とは「初日の出」の意味で、せいぜい拡張しても「元日の朝」の意味にしかなりません。 1月1日のことを午後や夕方まで含めて「元旦」と呼ぶのは誤りです。

注3:「概ね」というのは、「立春」が「朔日と次の朔日との中ほど」に来たときに、「最も近い」が必ずしも日数の長短を意味しないということにだけ注意すれば良いという意味です。 詳しくは、次の注を参照してください。

注4:元日の日付は、直接には立春そのものではなく、半月後の「雨水」と前後の朔日との関係(細かく言えば、1ヶ月半前の「冬至」、半月前の「大寒」、1ヶ月半後の「春分」、およびその前後の朔日も関わってくる)で決まります(詳しくは別ページ参照)。 しかし、これらは「立春」と連動するものですから、「立春が基準になっている」と言っても良いわけです。

注5:時々混乱する人が居るのですが、「立春&節分」には新暦も旧暦もありません。 「何月何日」になるかという日付は新暦と旧暦で違ってきますが、その日付で特定される日そのものは、元になる天体観測値や基準となる標準時が同じである限りは、どの暦だろうと同一です。


2002年6月26日WWW公開用初稿/2010年1月23日注釈を文末へ移動/2010年2月16日最終改訂 /2012年7月17日ホスト移転

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