「七夕=夏のクリスマス」論

 「七夕はクリスマスだ」なんていうと馬鹿にされるかもしれませんね。 確かに冗談半分の面もありますが、かなり本気の主張です。 まあ、聞いてください。

 全国的に七夕は新暦で実施することが多いようですね。 特にマスメディア主導の行事は圧倒的にそうなっています。 でも、東北地方の有名な七夕系の祭りなど、伝統的な行事は「旧暦」か「月遅れ新暦」で実施することも多いようです。

 そもそも、人日(1/7)・桃の節句(3/3)・端午の節句(5/5)・七夕(7/7)・重陽の節句(9/9)という一連の節句行事は、全て季節感の強い行事であり、旧暦の季節感に合わせた習慣が定着しています。 にもかかわらず、ことごとく新暦で実施するというのはどうかしていると思うのですが、中でも七夕は最も馬鹿げていると思います。

 それは、新暦で1ヶ月早めることにより、七夕が「梅雨後期の豪雨の真っ最中」になってしまうからです。 天の川を挟んだラブロマンスが語られ、星に願いを託すという行事は、梅雨が完全に明けた晩夏〜残暑の季節に相応しいものではないでしょうか? 星好きの人達からは、夏の大三角形(織姫&牽星+川の中のオジャマ虫)が最も美しいのは旧暦(or月遅れ新暦)の七夕の頃だという声も聞きます。 その星が高く揚がる夜半に月が西へ沈んで暗くなるという、旧暦7日ごろの状況も重要かもしれません。 日本で七夕の習慣がこれだけ定着しているのは、このような季節感の賜物だと思います。 しかし、現状は、一番良い季節を外し、最悪の季節に当てていますね。

 七夕でもうひとつ馬鹿げた話は、盆との不整合です。 意外に思う人も多いかも知れませんが、七夕(7月7日)は盆(7月15日)の8日前、即ち時期的にはセットになる行事です。 ところが、現代日本では盆だけ月遅れにして、七夕を新暦の時期に取り残してしまう傾向がありますよね。

 盆と言えば正月。 二期作の習慣が弥生時代からあった日本では、盆と正月はセットです。 昔は1年に2回年を取ったという話もありますしね。 そうすると、盆の8日前に当たる七夕は、正月の8日前に当たるクリスマスイブに対応するということになります。 そうなんです、七夕は「夏のクリスマス」なんです。 クリスマス同様、愛を語る夜なわけです。

 こんなことを主張すると、あっちこっちからツッコミが来そうですね。 大体クリスマスなんて明治以降の移入文化だし、クリスマスイブに愛を語るなんてホンの最近の習慣じゃないか。 盆と正月の対応にしても、やぶ入りの期日(1月16日と7月16日)から考えても盆は小正月(1月15日)に対応するべきもので、七夕はむしろ人日(七草:1月7日)に対応するんじゃないかという意見もあるかもしれません。

 まあ、お願いですから、そのへんは細かく突っ込まないでください。 「七夕=クリスマスイブ」って、インパクトが強くて面白い等式じゃないですか。


2002年6月26日WWW公開用初稿/2012年7月17日ホスト移転/2018年6月27日最終改訂

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