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スカラーの調和微分

調和微分というよりも、「Laplace演算」と呼んだり、演算子の名前である 「Laplacian」を演算の名前として用いることの方が多いかも知れない。 にもかかわらずこの言葉を使ったのは、スペースの都合と、 「Laplacian」という言葉がスカラーに対する演算という限定されたイメージを 若干持ち合わせているという2つの理由による。

ちなみに「調和(harmonic)」という言葉は形容詞としてはよく用いられる。 例えば、「調和関数」と言えば調和微分が恒等的に0である関数 (つまりLaplace方程式の解)のことであるし、 ある関数が別の関数の調和微分で定義されることを「調和的」と表現することもある。

さて、調和微分の元々の意味は「方向別二階微分の和」である。

\begin{displaymath}\Delta f \mathrel{\mathop=\limits^{\scriptscriptstyle def}}\f...
...artial ^2 f}{\partial y^2} + \frac{\partial ^2 f}{\partial z^2}\end{displaymath}

この定義からは当然には座標系に独立な演算ではない。

ところが、少し計算するとわかるように、単位長さが1の直交直線座標では

\begin{displaymath}\Delta f = \mathop{\hbox{\rm div}}{(\mathop{\hbox{\rm grad}}f)}\end{displaymath}

が成立つ。 $\mathop{\hbox{\rm div}}$ $\mathop{\hbox{\rm grad}}$が座標変換不変であることから、 上述の$\Delta f$の歴史的定義が座標変換に対して不変であることがわかる。 一般の座標系ではこうはいかないので、 元の定義を捨てて $\mathop{\hbox{\rm div}}\cdot\mathop{\hbox{\rm grad}}$を調和微分の定義とする。 こうして$\Delta f$が座標系によらない「実体」に対する演算になる。

直交曲線座標での表現は容易に求まる。

\begin{displaymath}\Delta f = \frac{1}{\eta} \frac{\partial }{\partial x_l}
\left(\frac{\eta}{g_l^2} \frac{\partial f}{\partial x_l}\right)\end{displaymath}



Ichiro Tamagawa 平成11年9月24日