通算第288回(2022年4月号)

 春の演奏会で採り上げる「となりのトトロ」の音楽について見てみましょう。

随時講座:合奏中の話題から(その31)

 第8講(1999年10月号〜2000年1月号)や第26講第7回(2009年11月号)でも見たように、久石譲がジブリ作品の音楽を担当する場合、映画公開に先立って「イメージアルバム」を公開するという手法を使うことが多く、「となりのトトロ」もその例に漏れません。 ちなみに、久石がジブリ作品に初めて関わった「風の谷のナウシカ」では、元々は「イメージアルバム」のみの担当だったところ、宮崎駿や高畑勲に作品を気に入られてそのまま映画随伴音楽の担当になったという経緯があったようです。 この成功体験が意識されているのかもしれません。

 ただ、同じ「イメージアルバム」と言っても、作品によって位置付けが様々なことは第26講第7回でも見た通りです。 「となりのトトロ」の場合には「イメージソング集」と呼んでいます。 これは後の「千と千尋の神隠し」でも用いられた手法で、歌詞のある「唄」でイメージを膨らませたうえで、インストゥルメンタル(器楽)の随伴音楽に発展させようというものです。 「千と千尋の神隠し」では1曲ごとに異なる歌手を呼ぶという大袈裟なことをしていますが、「となりのトトロ」ではそこまでのことはしていません。 唄の性格に合わせて特に歌手を呼んでいる曲もありますが、基本は映画本編の音楽も歌っている井上あずみと杉並児童合唱団です。

 当然ながら「イメージソング集」の曲が全て映画で使われたわけではなく、サウンドトラックに含まれているのは10曲中7曲です。 ただ、この7曲はいずれも映画で重要な役割を果している音楽であり、「イメージソング集」の重要性が窺えます。

参考文献

Wikipedia「となりのトトロ」「風の谷のナウシカ (映画)



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