「リンク・著作権に関する方針」雛型

 「リンクには著作権に基づく許諾が必要」という誤解が、1999年から2001年ごろにかけて猛威を振るっていたのですが、最近はかなり沈静化してきたように思います。 その背景には、誤った考えを正そうとする多数の方の努力があったようですが、そのような方々のサイトから、琵琶湖博物館の公式見解であるリンクについての琵琶湖博物館の考え方や、これを起草者の立場から解説した「リンクについての考え方」公表に至る背景についてへのリンクを多数いただいているようです。 世の中のお役に立てることができているという意味で、非常に嬉しいことです。

 しかしながら、企業や地方公共団体などのサイトを中心に、リンクに対する強制力の無い(多くは理不尽な)要求を、さも強制力があるかのように主張しているものが、相変わらず目立ちます。 多くの場合、著作権などに基づく「強制力をもって要求できる権利」との混同や、リンクされることで自らに責任が生ずるという誤解に基づくものではないかと思われます。

 このような状況を改善するには、正しい知識を理詰めで広める活動も必要でしょうが、それと並行して、望ましい在り方を具体的に提示することによって、感覚的に知識を広めることも必要ではないかと思い立ちました。

 本ページは、この考えに基づいて、各サイトの「リンクについての考え方」(リンクポリシー)の雛型を公開しようとするものです。 リンクと「著作物利用」との混同が多い現状を踏まえ、著作権に関する考え方と併せて表明する形式に整理してみました。

著作権について

 本サイトの各ページに含まれるテキストや画像は、〓〓〓〓が著作権を有する著作物ですので、著作権を侵害するような利用をしないでください。 具体的には、例えば以下のような利用は、自由に行っていただくことができます。

  • 通常の方法でブラウザに表示することは自由です。 これは、テキストや画像をWWWサーバに搭載している以上は、暗黙のうちに万人に対して許諾していると考えられるからです。
  • 通常の方法でブラウザに表示したものを、個人的に利用するために保存したり印刷したりすることは自由です。 これは、著作権法で認められた「私的利用」に該当するからです。
  • テキストを「引用」して利用することは著作権法で認められています。 但し、「引用」と認められるには、いくつかの条件(出典明示・引用部分と他の部分の区別・必要最小限・引用部分が全体の中で「従」であるなど)があるので、注意してください。
このような範囲を越える利用、例えば画像を御自分のWWWページの中に転載して公開するなどの利用をされる場合には、事前に許諾を得ていただく必要がありますので、〓〓〓〓まで御連絡ください。

解説

 特に目新しいことは書いていないが、「何が許されて何が許されないのか」を一通り論述してみた。 ここまできっちり書いているサイトは少ないだろうと思うが、あえて権利を主張するのであれば「どこまで主張するのか」をきちんと明示しておくのが親切というものであろう。

当サイト内ページへのリンクについて

 一般論として、公開されているページへのリンクは誰でも自由に行うことができます。 これは、リンクを張るのは、リンク先の著作物に対する「言及」あるいは「参照」に過ぎず、著作物の「利用」では無いからです。 既に公開されているページへのリンクであれば、そのページに関する「公表権」や「送信可能化権」を害することもありません。 従って、当サイト内の公開ページへのリンクも、自由に行っていただくことができます。

 従って、当〓〓は、当サイトに向けて設定されているリンクおよびそのリンクが設定されているサイトの内容について、一切の責任を負いません。 たとえ当該リンクが当〓〓との協議に基づいて設定された場合でも、そのリンクに対する直接的な責任は、リンク元サイトの管理者にあります。 これは、リンク元サイトは当〓〓の管理下にあるものではないからです。

 但し、何らかの不法行為を行うための手段としてリンクを張る、あるいはリンクを張ることが結果として別の不法行為を誘導するといった場合が考えられます。 このような場合には、その不法行為を止めていただく手段として、リンクの解除を要求し、あるいは将来に向かってリンクを禁止する法的措置を取らせていただくこともあります。 具体的には、例えば以下のような場合です。

テキストや画像の著者を誤解させるようなリンク

 これは「著作者人格権」の一種である「氏名表示権」の侵害であり、場合によっては詐欺などにつながることもあります。 いわゆる「埋め込みリンク」(<IMG>タグを使って、ページの中に他のサイトの画像を埋め込んで表示してしまうこと)や「フレームリンク」(他のサイトのページをフレームの構成要素として定義してしまうこと)は、このケースに該当する場合が非常に多いので、注意してください。 また、リンク先を適切に表示しないリンクも、このケースに該当することがあります。 リンク先が〓〓〓〓のページであることが判るようなコメントをつけていただくようお願いします。

ページのデザインを損なうようなリンク

 ブラウザの違いなど利用者側の環境に依存してデザインが変わるのは、WWWの技術的特性です。従って、情報提供者はこの問題を承知した上で情報を提供していると推定するべきであり、その結果としてデザインが崩れても権利の侵害にはならないと考えるべきでしょう。 しかし、リンクの設定など、利用者側環境以外の問題に関する意図的な行為によってデザインが変えられてしまうのは、「著作者人格権」の一種である「同一性保持権」の侵害になりかねません。 いわゆる「埋め込みリンク」や「フレームリンク」は、このケースにも該当する場合が多いので、注意してください。

名誉毀損や偽計業務妨害の手段としてのリンク

 リンク先に対する批判や評価を伴うような形でリンクを張るのは、よく行われることです。 それが正当な批評の範囲で行われるのであれば問題はありませんが、専ら相手を陥れる目的で事実に基づかない誹謗中傷を行ったりするのは不法行為です。

解説

 「リンクは自由」ということを説明しようとすると、「リンクに伴う不法行為」のことを持ち出して反論しようとする人が少なくない。 そういう人には、不法行為が問題なのであって、リンク自体に罪は無いという説明が必要であろう。 リンクはせいぜいのところ手段に過ぎないのである。 心配性のサイト管理者には、そこまで踏み込んだ説明をするということで納得してもらうしか無いだろう。

 こういう問題に対して「リンクをお断りします」という表現で主張するサイトが多いようだが、誤った表現である。 サイト管理者には、リンクそのものを拒絶する権利など無いからである。

 また、「リンクをお断りします」と主張するサイトの中には、「公序良俗に反するサイト」からのリンクを拒絶すると主張するものが多く見られるが、全くのナンセンスである。 リンクされる側は、どのようなサイトからリンクされるかということをコントロールする手段が技術的にも法的にも存在しないのであるから、どのようなサイトからのリンクを受けようとも、何らの責任をも有さない。 どこからのリンクだろうと“一切預かり知らぬ”という割り切りが必須である。

 心配性の管理者は、「公序良俗に反するサイト」からのリンクが別の問題を派生させるかもしれないと言い出すかも知れない。 リンク元が公序良俗に反しているからといって、どんな問題が通常以上に頻発するのか全く想像できないが(業務妨害でも想定しているのか?かなり無理があると思うが……)、万一問題が発生したら、その問題に対処すれば良いのである。 実効性の無い予防線を張っても無意味である。

 第2段落は、こういう「リンクを受けることに伴う問題」を過度に気にする管理者、あるいは責任問題に敏感(というか臆病)な管理者のために書いてみた。 わざわざ宣言しなくても当たり前というべきかもしれないし、文章の流れも悪くなるので、それが気になる人は、この段落を丸ごと削除してしまっても構わないだろう。

 なお、「商用目的のリンク」を拒絶する主張も見かけるが、商用であること自体を拒絶理由とするのは全く理屈が通らない。 例えば、それが具体的な偽計業務妨害を構成するのであれば、その業務妨害行為を問題にするべきであろう。 リンクに伴う付加価値(目的を特化した検索サービスなんてのがあるかも)で商売をするのであれば、それはそれで独立した商行為であり、リンクに従って到達した利用者に対しては、そのページの本来の効果を改めてフルに発揮することになるのであるから、何ら問題にはならない。 自分のページを使って商売されるのは腹が立つという人も居るかもしれないが、それは自分のページの商用価値に気付かなかった自分の失策であり、気付いて利用した他人を責めるのは、単なる八つ当たりである。

当サイト内ページへのリンクについて(続き)

 リンクを張っていただく場合、
(以下から3者択一)
  1. その旨を御連絡いただけると助かります。 当サイトへの注目度の指標として、有益に活用させていただきます。
  2. その旨を御連絡いただいても構いませんが、特に御回答は差し上げませんので、御承知おきください。
  3. その旨をメールで連絡するなどということは、堅く御遠慮ください。 度が過ぎる場合には、業務妨害として訴えることがあるかもしれません。

 なお、リンク先URLとしては、〓〓〓〓を推奨します。 それ以外のページのURLもなるべく変えないように努めますが、将来予告無く変更する可能性があり、そのために生じた不利益については一切責任を負いませんので、予め御承知おきください。

解説

 前半は、各サイトの方針に応じた表現を適宜選択すれば良い。 ただ、連絡を入れるのが義務であるかのように主張する誤った表現だけは避ける必要がある。 このことを強調する意味で、敢えて逆の立場に基づく「誤った主張になっていないギリギリの主張」を例示してみた。

 後半は、「リンクについての琵琶湖博物館の考え方」の中の「リンク対象URLの指定について」と本質的に同じことであり、「リンクについての考え方」公表に至る背景についての中でも「URL変更の連絡に関する問題」と題して論じた通りである。

 ちなみに、下位ページといえども、そのURLを安易に変更するのは、管理者自身の「不利益」になる行為であるということは是非とも意識しておいて欲しい。 「どのページのURLも、なるべく変えないように努めます」と高らかに宣言するくらいの気概は、全ての情報提供者に持っておいていただきたいものである。 詳しくは、博物館のページについての実情調査から論じた論文を参照してもらいたい。


2003年4月18日初稿/2003年9月5日最終改訂/2014年1月23日ホスト移転/2018年1月13日リンク修正

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